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ここはクマーが自由気ままに更新するブログです。幻想入りとかの作成状態とかも書いていきますよ。
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ある夏の事でした。
一本の巨大な鉄の塔が幻想郷にやってきました。
しかし、それも珍しいことではありません。
ここは忘れられた幻想が集う場所。
始めのうちは珍しい物見たさで人も寄ってきましたが、数日もすればその奇妙な鉄の柱も風景の一部になっていました。


人が気にもかけなくなってから数日。
ある日、一匹の河童が、その鉄の塔の近くに来ました。
河童はそこで、奇妙な鉄の棒を拾いました。
それには、傘のような物も付いています。
コレは珍しい!一体これは何なのだろうか?
河童は、ソレを持ち帰ることにしました。



自分の住処についた河童は、早速ソレを調べます。
コレは一体何に使うのだろう?
傘にしては使い勝手が悪い。
そのままでは使い道がない。
棒は傘の中心にあいた穴を通って突き出している。
傘の部分が、何かを集める役目をしている…?
はてまたその逆か…。

河童は何か閃いたようです。
早速、その鉄の棒を使って、様々なものを作りました。
初めは声を拡散する装置。
次は風を送り出したり集めたりする機械。
しまいには、ビームを出すことまで可能になっていました。
しかし、やっぱりどれも本来の使い方ではないような気がします。
河童は何時しか疲れてしまい、眠りについていました。











……ふと、声がしました。
懐かしい声でした。
何かと自分の使い道のない発明を面白がってくれた人。
自分を認めてくれた人。
その人がいるだけで
その人の声が聞けるだけで
何でも頑張れた
その人と一緒なら、どんなものだって作れる気がした
そんな大事な人
その人の声を聞けなくなってから、どれくらい経ったのだろう?
その人と遊べなくなってから、どれほどの月日を過ごしただろう?
いつしか、昔のような気力は無くなっていた
あの人が居なくなってから、全てを無くしたような気さえしていた

もう二度と、あの人と遊ぶことが出来なくても
もう二度と、あの力が満ち溢れる笑顔が見れなくても

せめてもう一度だけ
もう一度だけ



……あの声が聞きたい















目が覚めたら、なぜか目には一杯に涙が溢れていました。
なにやら懐かしい声を聞いたような気がしました。
もう二度と会うことは出来ないのに。

………
河童はもう一度、鉄の棒の本来の使い方を考え始めました。
なんとなく元気が出たからです。
自分でも、ずいぶん単純な理由で元気になるものだと苦笑します。
ただなんとなく。あの人が「頑張れ」と言ってくれた気がしたから。
もう二度とあの人とは遊べないけれども、あの人が期待してくれるだけで、こんなにもやる気になれる自分に笑ってしまいます。
少しだけ気が楽になりました。
それと同時に、またあの声が聞きたいとも思いました。

そこで、河童はハッとなって、自分の発明品の山を掻き分けます。
あれじゃない。これじゃないと次から次へと発明品を引っ張り出します。
小一時間探していたら、どうやら目当てのものを見つけました。
それはずいぶんと前に作り出した物。
あの時は、あと一パーツ足りないと言って完成目前で作るのをやめた物。
もしかしたら…
そう思い、河童は拾ってきた鉄の棒と自分の発明品を組み合わせていきます。

そうして、夜が明ける頃。
河童の発明品が完成しました。
試しに動かしてみますが、やっぱり何も聞こえません。
ソレは遠くの人の声も聞けるという代物でした。
自分の中での推測はあっているはず。
しかし、幻想郷にはソレがないのかも知れない。
そう結論付くと河童は落胆しました。


どうあがいても、もうあの声は聞けないか…


半分分かっていたつもりでも、やっぱり肩を落としてしまいます。


今の幻想郷じゃ無理か……
………あれ?でも、最近此処にきたアレの近くならもしかして……!?


そう思い立ったら、河童は居ても経ってもいられませんでした。
すぐに家を飛び出して、アレに向かいます。
あの鉄の棒を拾った鉄の塔まで、発明品の「ラジオ」を手にして…












……数時間後、河童は鉄の塔の前にいました。
肩で息をするぐらい大急ぎで走ってきました。
既に日も落ち、辺りは闇に包まれています。

河童は心を落ち着けると、祈りを込めるようにラジオのスイッチをいれました。


………しかし、やはり何も聞こえません。


河童は落胆しました。
ここまでくると、むしろ笑えてさえきます。
現実をつき立てられて落胆した河童は、鉄の塔の麓に腰を下ろします。


やっぱり駄目だったか…
分かってはいたんだけどね……


少しだけ涙がにじみます。
涙がこぼれないように空を見上げます。
涙がこぼれると、余計に惨めになるから。



また…聞きたかったなぁ…



空には満点の星が出ていました。



聞きたかったんだよ……君の声を…



星が流れます



これでも頑張ったんだよ…?



いくつも星が流れます。



君に会いたくて…

君の声が聞きたくて…

もう一度「凄いな」って言って欲しくて…・

それだけで頑張れる気がしたから…

それだけで、一生頑張れる気がしたから…

だから……

君の声が聞きたいよ………





いくつもの星が流れ、まるでシャワーのように空を覆います。







「魔理沙ぁ…」








そのときでした。

ザザッ……ザザザッ………

ラジオに反応がありました。
河童は驚き、急いでラジオに耳を寄せます。

ザザッ………

音が遠のきます。

「やだ…やだやだ!!」
お願い!!!!!

河童が叫びます。
祈りを込めて
思いを込めて


すると、かすかに、かすかに声らしきものが聞こえます。


ザ…ザザ……とり…………にとり……


聞こえたのは自分の名前。
懐かしい声で
自分の名前を呼ぶ声がしました。

河童は驚きます。
聞きたかったあの声が、自分の発明品の中から聞こえるのだからです。

しばらくすると、雑音まざりですが確かにアノ声が聞こえてきました。

「聞こえた…聞こえたよ…魔理沙……」

ずっとずっと一緒にいた声。
いつまでも一緒だと思っていた声。
聞いてるだけで暖かくなって
聞いてるだけで嬉しくなって
名前を呼んでくれるだけで、くすぐったくて
もう二度と聞こえないんじゃないかと思っていた




しかし、すぐにまた、彼女の声は雑音にかき消されてしまいます。
河童はすこしでも彼女を声を聞き逃さないようにするために、ラジオに耳をくっつけます。
それでも、徐々に徐々に彼女の声が消えていきます。

「お願い…っ……もう少しだけ、もう少しだけでいいから」
河童は祈ります。
奇跡でもなんでもいい。
彼女に何でもいいから言ってもらいたい。
たとえ、コレが最後でもいいから。


それでも運命は残酷で、もう、雑音しか河童の耳には聞こえませんでした。
それでも、河童は耳を離しません。
離したくないのです。
離したら、本当に最後になってしまうように思えたから…







「お願い………っ!!」







空に最後の星が流れた瞬間でした。
本当に一瞬。
小さな小さな声で
普通ならば聞き逃してしまうような小さな声で
それは聞こえました。






















                   ――頑張ったな――





























その声を最後に、ラジオはボンッと煙を出して、もう二度と動かなくなりました。









何時間くらいでしょうか。
河童は、ただ壊れたラジオをじっと見つめていました。

しかし、河童の目には、もう涙はありません。
笑顔……というには少々無理がありますが、その顔は、さっきまでの悲しい顔ではありませんでした。




河童は、優しく、いとおしむかのように壊れたラジオをぎゅっと抱きしめると、鉄の塔に一度振り返り、自分の家に走って帰っていきました。





河童が何を思っているのは分かりません。
ただ、家に走って帰っていくときの河童の顔はやる気に満ち溢れていました。
笑って 笑顔で




まるで、太陽のように笑う、いつかの魔法使いのように


























河童の名前は「河城にとり」
幻想郷の山に住む、幻想郷の発明家である。




~END~
*********************************************

久々の更新すぎてワロタ。
これからは、自分が小説書いたときにでも書いていくよ多分w

pixivに上げたにとりの絵を描いてるときに思いついた、にとり×魔理沙の物語でしたー。
うん。まぁ寿命ネタだね。俺が書く小説は寿命ネタになることが多すぎるお・・・(´・ω・`)
使いやすいからって寿命ネタに頼りっぱなしなのは良くないね。仕方ないね。

個人的には結構気に入ってる部類に入る物語。ただ、小説とかに関してはド素人なんてレベルじゃないから荒削りなのはご愛嬌。物語作るのも勉強したいものだ・・・(´ω`)

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無題
やっと・・・やっと更新してくれた・・・!

もう何ヶ月も更新しないもんですからブログやめちゃったのかと思っていましたが、まさかの小説。いやぁ凄いです。

小説のほうはとても良いと思います。熊吉さんの書く文章はとても個性的(という表現しかできないんですけど)で個人的に好きです。にとりでこんなに感動したのは初めてだ。

ゆっくり更新していってくださいねー。
ナナシノ 2010/06/27(Sun)20:39: 編集
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クマー
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35
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男性
誕生日:
1988/12/28
職業:
専門職らしき何か
趣味:
お絵かき カラオケ
自己紹介:
夢は、自分の作品を見てくれた人を皆笑顔にすること。

常に毎日が一杯一杯。
絵を描く事と歌う事が好きな熊野郎。
「紳士という名の変態である」と、自分でも思っている。
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